深い傷
だれにも言ったことないはなし。
35キロだった体重が1キロ増えた時、死なないといけないと思ったの。
人の少ないショッピングモールの100円ショップで安全刃のない貝印のピンクのカミソリを買って、滅多に人が来ないお店から離れた共用トイレに篭った。
手首から肘の中間、
深く切りたい時は勢いよくなんて引かない。
刃の端っこを、皮膚に数ミリ食い込ませる。
グリグリ押しつけて、ゆっくりゆっくり
押しながら引いていく、
人の眼みたいな、パックリとした切り口、
深すぎて血は出ずに勢いよく出てくる脂肪の塊、
持参したピンセットで一つ一つ脂肪を抜いていく。
大きい脂肪を取った時に噴水みたいに溢れる血、
やばい、これ貧血になるぞ、いや私は死にたいんだ
と思っていたら誤作動か、閉め忘れか、
開いたトイレのドア、
乳児を連れた若い女の人と目が合う、
慌てて戸を閉める、
やばいやばいやばい、
流石にどうしようもなくて止血して自宅に帰る、
呆れ顔の母親、
縫いに行った整形外科ではボロクソに言われ
処置する看護師は嫌味のオンパレード
今でも私の腕で一番太い傷。